「ディックは7連覇をし、多くのスケーターにインスピレーションを与えてきました。彼の偉業をたどることは信じられないほど光栄なことです。今季はいつもと違い、結弦や(宇野)昌磨(23)らのトップ選手たちと会うことがなく変な感じでした。でも今回は米国の素晴らしい選手たちと試合できて嬉しかったです」

 世界選手権では、さらに4回転の精度を上げてくるだろう。

 また表彰台争いは、宇野、鍵山優真(17)らの活躍に期待がかかる。スイスを拠点に練習する宇野は、全日本選手権が今季初戦となった。ショートで2本、フリーで4本の4回転を入れ、1本ずつミスして2位だったが、笑顔を見せた。

「これまで、なかなか大会に出られない日々でした。今回、羽生選手という存在を目の当たりにし、僕と羽生選手の差は自分が思っていたより離れているのを改めて自覚できて、目標を再確認できました」

 鍵山は、勢いが止まりそうにない。今季はショートで2本、フリーで3本の4回転を入れる。

「五輪の金・銀メダリストが(日本男子に)いるのは頼もしいですが、自分も本当に完璧な演技をすれば表彰台も夢じゃないと思うので、狙っていきたい」

(ライター・野口美恵)

AERA 2021年3月29日号より抜粋