Find Job!が軌道に乗り、次のアイデアもあって、このままネットを使った自分の事業をやっていこうと決めました。一方、大学で学ぶ意味も感じ続けていました。起業のきっかけはゼミだし、起業後に直面した問題の解決にも大学の学びはとても大きかった。吸収したいことがたくさんあったし、ビジネスを動かし、成長させるうえで欠かせないものでした。

 次に始めたネットオークションサービスは競合に勝てず、00年に売却しています。それでも、これからどんな時代がくるのか常に考えていたし、また新たなサービスを生み出せる可能性も信じてきました。04年に海外で隆盛の兆しがあったSNSを日本風にカスタマイズしてmixiをつくり、15年に自分の体験と高齢世代がスマホを持ち始める社会情勢を見て家族向けの写真共有サービス「みてね」をリリース。自身の価値観と外部の環境、世の中のサービスの動きをミックスさせながら、何ができるかいまも考えています。

■若い感性で新サービス

 いまは、変化が激しい時代。ITの世界でも、日々新しい技術が生まれてきている。変化の中にチャンスはあります。ユーザーがこれまで体験したことがない驚きや喜びを提供していける土壌は昔と同じようにあるし、社会の流れも起業に好意的です。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家がいくらでもいて、魅力的な事業なら資金が集まりやすい。学生で起業する人も珍しくなくなって、「一緒にやりたい」と手を挙げてくれる人も増えていると思います。

 若い消費者たちを一番わかっているのは同じように若い人たち。学生起業家は、その若い感性から世の中を変える新しいサービスを生み出す可能性を持っています。時代を彩るサービスが学生から生まれてほしいですね。

(構成/編集部・川口穣)

AERA 2021年3月29日号