主な都市部の「空室率」(AERA 2021年3月29日号より)/札幌、名古屋、大阪、福岡はこちら
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「空室率が5%を超えると、賃料の下落圧力がかかります。コロナ以前から予定していたビル建設が控えるなかで、今後感染状況が落ち着いたとしても、大量供給を消化できるほどの需要は見込めません」(川村さん)

 森ビルが昨年12月に発表した調査では、新たにオフィスを借りる予定がある東京23区の企業のうち、オフィス面積を縮小する企業は42%で前年の10%を大きく上回る。料理レシピサイト「クックパッド」やニュース配信アプリを手掛ける「グノシー」、AIベンチャーの「ABEJA」のように、シェアオフィス「WeWork(ウィーワーク)」へ移転する企業も出てきた。25年までに「賃料は2割ほど下がる」と川村さんは見込んでいる。

 5%を超える地域はほかにもある。横浜・関内や新大阪、船場、名古屋駅(名駅)、博多駅前などの都市部でも空室率が上昇。だが、東京都と比較して需給バランスが安定しているため、東京ほど大幅な賃料の変動はなさそうだ、と川村さん。

店が時短を守っても…

 オフィスの空室は、街に根差す飲食店にも影を落とす。

「リモートワークが続き、周辺企業に勤める方が店に来づらくなっています」

 東京・六本木のミッドタウン近くにあるビアバー「シャムロック」の高橋大輔さん(31)は、1月8日からの2度目の緊急事態宣言以降をそう振り返る。1度目の宣言時には店を1カ月休業。昨夏には例年の6割まで客足が戻ったが、再び落ち込んだ。

「20時までの時短営業でしたが、お客さんも9割ほど減ったと感じています。朝7時からモーニングを始めるなど頑張っています」(高橋さん)

 2度の延長を経て、2カ月半に及んだ緊急事態宣言は、21日で解除された。病床使用率や人口10万人当たりの新規感染者数などの解除指標は改善しているものの、東京都の新規感染者数は下げ止まりが続いている。

 新型コロナウイルス対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」が3月上旬以降の4都県(東京、埼玉、千葉、神奈川)の新規感染者について「他地域と比べても高い水準で横ばいから微増」との見解を示すなど、手放しで喜べない状況だ。

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