しかし、食べ物で遊んでもいいというわけではありません。

「ぐにゅっとする感覚は、粘土でも味わえますから、『それは粘土遊びでしようね』と話しながら止めてください」(同)

 食事マナーもさることながら、好き嫌いの激しい偏食も気になるところです。偏食が身体に与える影響はないのでしょうか? この問いに答えてくれたのは、医師の渡部基信先生です。

「離乳食のうちからいろいろな味に親しむのは大切ですが、もっと大事なのは毎日同じ時間に食事を取ることです」

 いろいろな物を食べさせようと離乳食作りに凝って、食事時間が遅くなるくらいなら、市販の離乳食を使いながらでも、同じ時間に食事をあげて、生活のリズムを整えることが乳児期には大切です。

「市販品で罪悪感があるなら、少しアレンジを加えればいいし、嫌いな食べ物は味付けを工夫するなどしていれば、だんだんと食べられるようになります」(渡部先生)

 離乳食の前のミルクを飲む段階で抱えてしまう悩みもあります。赤ちゃんが生まれれば、自然に出ると思っていた母乳も、人によっては出が悪いことも。おっぱいマッサージをするなど、いろいろと頑張っても出ない時にはミルクと併用し、赤ちゃんが栄養を取れるようにしてあげることも大切です。

「母乳が出ないと“私はダメな母親だ”と自分を責める人がいますが、そんなことはありません。粉ミルクで育てたからといって、愛情が足りないとかいうことはありません」(同)

 ところが、ミルクにしてみようと思っても、なかなかミルクを飲まない子もいます。

「母乳とミルクでは温度の違いや味の違いなど、いろいろな違いがあります。初めて飲む赤ちゃんにとっては未知の食べ物です。また、哺乳瓶につける乳首の形状に違和感を覚えていることもあります。諦めずに違和感を取り除く方法を考えてみてください」(同)

 たとえば、ミルクを冷ます時間を長くして、もう少し温度を下げてから与えるなどです。また、哺乳瓶の乳首を変えてみるのもいいようです。

「最近は、各メーカーからいろいろな物がでていますから、赤ちゃんの好みの物があると思います」(同)

 また、母親がミルクをあげると飲まないのに、父親や、保育園の先生があげると飲む場合もあるようです。保育現場で多くの赤ちゃんを見てきた井桁先生はこう説明します。

「赤ちゃんは五感が大人より優れていると言われています。いろいろな違いに気づいています。いつもおっぱいをくれている母親が別のものを与えようとすると“なんでおっぱいじゃないの?”と、普段と違うことを警戒し、拒否することも。無理強いせずに、嫌がったらやめるようにして続けていけば、“こういうこともある”と受け止めてくれるようになります」

(フリーランス記者・宮本さおり)

※アエラムック「AERA with Baby 解決!子育ての基本の悩み」より