SAPIX教育情報センター・広野雅明本部長は、昨年の3月に休校要請が出されてからの動きを次のように話す。

「小学校に合わせて本塾もお休みにしようと、わりとすんなり決まりました。本塾は授業ごとにテキストを分冊で配っているのでまとめて郵送し、それぞれの授業のポイント動画を作って配信しました」(広野本部長)

 電話やメールで質問を受けながら、双方向のオンライン授業を模索。グループの高校受験部や大学受験部はオンラインの経験があるものの、小学部は初の試みだった。

「当時はWi-Fiやタブレット、PCなどの入手が困難で、ツテを頼りにかき集めました。『これをやりたい』というよりも、その時の環境でできることは何か、走りながら試行しました」(広野本部長)

■昨年の「解除」後は…

 準備が整い、数クラス合同で時間を短縮して開始。しかし画面越しとはいえ、先生や友だちに会えたと、生徒に授業の活気が戻ってきたという。

 昨年6月の緊急事態宣言の解除を受け、クラスを半分に分け時間を短縮して対面授業を再開。2週間後から通常の授業に戻った。もうひとつの気がかりが、入試当日の講師による応援だった。

「夏にはいったん落ち着きましたが、いつ第2波、第3波が来るかわかりません。本校からの入学生が多い学校に応援の自粛を持ちかけたところ、賛同していただきました」(広野本部長)

 他塾にも声を掛け、すべての塾が応援を自粛した。当日応援に行けない代わりに各校舎で応援動画を作って配信し、受験生を励ましたという。

「コロナで受験できない生徒を出さず、無事終えてほっとしています」(広野本部長)

(文/教育ジャーナリスト・柿崎明子)

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