話し方のコツは……、笑う声と書いて“笑声(えごえ)”ですね。口角があがっているかどうかで、場の雰囲気は明るくも暗くもなります。私はそのために、鏡を置いて口角をチェックしながら、おしゃべりしているんですよ」

■たちまち「いいね」つく

 一方コンテンツでおすすめなのが、体験や学びを語るもの。無理なくしゃべれるテーマを選んで、とにかく一度配信してみることが大事だという。

「配信する人が熱心なリスナーであることも多い。いろいろ聞いて、積極的にコミュニケーションすると、自分の配信を聞きに来てくれるリスナーも増えることが多いですね」

 はい。わかりました。じゃあ、まずはほかの配信のチェックから……のつもりだったが、自分の場合は、お道具から。師匠をはじめ、多くの音声配信界のスターも使っているというイエティというブランドのマイク(約1万7千円)を購入し、やる気をチャージして挑むことに。「やさしい大人のリスナーが多く、炎上が少ない」と師匠におしえてもらったstand.fmを舞台に、さっそく音声配信デビューにチャレンジだ。

 ちなみにネット上には、自分が2~3日だけ書いて忘れているブログが、山のように漂っているはず。だって人に自慢できる日常なんて、2~3日分くらいしかないわけで。そこで、新大陸での配信テーマは、体験ものより、聞いた人がためになる学び系をチョイス。コロナで人としゃべる機会が減って、誤読が増えている新語、流行語を紹介することにした。名付けて「声に出して読みたい、新語流行語」。

 師匠のアドバイスで、台本代わりのメモを作り、stand.fmのアプリを入手。これだけで、配信は大部分が終了したも同然。アプリに入っている録音ツールで録音し、あとは専用サイトにアップしたら、あっという間に私も今日から音声配信の世界の一員になった。

 ただし、録音中に犬が自慢の高性能マイクのすぐそばでワンワン吠えたり、夫が独り言をつぶやきながら部屋に入ってきたりして、録り直すこと3回。笑声どころか鬼の形相で作ったデビュー作を、えいやと公開した。

 何ということでしょう。たちまち「いいね」などが付いて、あっという間に10人ほどのリスナーをゲット。あのくだらない音声を聞いてくれた人がいたなんて。しかも10人も。これだけでなんかもう、気がすんだ。

 翌日、第2回の配信をしたが、早くもネタはいくら頭を振っても出てこない状態。師匠のように毎日アップなんて、とてもじゃないが無理ということだけはわかった。というわけで、やっぱりライターの仕事、これからもがんばります。(ライター・福光恵)

AERA 2021年3月22日号より抜粋