「元夫に連絡はいかへん、そう思ってました」(女性)

 それが今年1月、元夫からこんなショートメールが届いた。

<どういうことやねん。書類が届いたが、そういう環境になってるなら親権を戻して子どもを親が引き取りたいと言っている>

 パニックになった女性はすぐ支援者と一緒に福祉事務所に行き説明を求めると、職員の上司にあたる人物から「申請書にDVの記載がない」と言われた。身の危険を感じた女性は、すぐ転居したいと伝えたが、市営住宅は抽選で申し込みをして当選しないと入れないと告げられた。

「2回も約束していただいたのに、どうして……」(同)

 そもそも女性は、10年前に離婚した際も生活保護の申請に行ったが、「元夫に連絡が行く」と聞いてあきらめた経緯があった。その後、DV加害者に扶養照会は行かないと聞くようになったが、それでも不安と恐怖を感じていた。そうした中、支援者から「大丈夫」と聞いて申請を決めたという。女性はこう訴える。

「役所の不手際なのに、対応には失望しかありません。せめて、住まいを確保してほしい」

 なぜ、このような事態が起きたのか。女性が申請に行った福祉事務所に聞くと「個別の事案に対しては、すべてお答えできない」(担当係長)とだけ答えた。

■本人承諾得ず連絡ダメ

 今回のケースについて、生活保護問題対策全国会議事務局長の小久保哲郎弁護士は厳しく批判する。

「元夫は子どもに対する扶養義務を持ちますが、実際に扶養を請求するかどうかは子ども本人の自由です。子どもが未成熟の場合は、法定代理人である母親が請求することになり、その母親が拒否したのであれば、職員が扶養照会したのは論外です」

 その上で、扶養照会最大の問題は、本人の意思にかかわらず照会をしている点だと指摘する。

「扶養照会する際には同意書を取るなど実務の運用を改善すれば、こうした事態を防ぐことができます」

 そんな中、厚労省は2月下旬、扶養照会の運用を改善する通知を全国の自治体に出した。

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