コロナ禍以前から、日本では若者の精神疾患や自死が問題だった。精神疾患を予防するための「早期支援」の取り組みが、日本でも始まっている。AERA 2021年3月22日号から。
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下町風情が漂う東京都足立区の北千住。駅から徒歩5分ほどのにぎやかな商店街の路地裏に、若者のどんな悩みもワンストップで対応する相談センター「SODA(ソーダ)」はある。古民家を改装した明るい造りだ。
SODAは医療機関ではなく、どこに相談したらいいのか分からない困りごとにも包括的に寄り添う。国内では先駆的な試みだ。
中心となっているのは東邦大学と医療法人財団「厚生協会」のスタッフ。厚生労働省の科学研究費補助金などで運営している。相談は無料だ。
■チームで問題を整理
まず精神保健福祉士が1時間かけて話を聞く。SODAは精神科医や公認心理師、保健師などでチームを作っており、必要があれば検討会で問題を整理していく。2回目からの面接は約30分。問題によっては病院や学校と連携する。生活困窮がからむ場合は行政の支援窓口につないだほうがいいこともあるが、一人で行ってもらうのはなかなか難しい。そんなときはスタッフが同行する。そうして半年以内をめどに、解決策を探っていく。
相談者の平均は22歳で、中学生や高校生も多い。メンタルヘルスの不調、人間関係の悩み、お金のこと……。いくつも問題がからまっていたり、何となくモヤモヤしたりといった悩みもある。2019年7月の開設からこれまでに、相談者の数は400人以上にのぼっている。
昨夏から通う埼玉県の男子大学生は、コロナ禍でオンライン授業となり、課題に追われるうちに眠れなくなった。大学をやめたいと思い始めたが、それを認めない親ともめた。
「もう耐えられない」と駆け込んだメンタルクリニックで、SODAを紹介された。医療だけでは対応できないとの判断だった。SODAでは家族関係の問題も大きいと見て、親に同席してもらった。メンタルの治療をしつつ面接を重ねたところ、学生は落ち着きを取り戻した。彼はこう話す。