エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
パースでは毎年恒例のビーチをギャラリーにしたアート展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」が開催されています(写真:本人提供)
パースでは毎年恒例のビーチをギャラリーにしたアート展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」が開催されています(写真:本人提供)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】パースで毎年開催されているビーチをギャラリーにしたアート展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」

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 長男が大学に通い始めました。オーストラリアの新学年は2月スタート。オリエンテーションが終わり、通常の講義が始まっています。西オーストラリア州では現在、新型コロナウイルスの新規感染者がほとんど発生していない状態で、通常通りに大学に通うことができます。もし一人でも感染者が出ると動きは迅速です。1月30日は州都パースで、海外からの帰国者が隔離期間を過ごすホテルの警備員が感染したことが判明。その翌日、パース一帯は5日間のロックダウンに突入。生活必需品の買い出しなどを除いて外出禁止、学校も休み、マスク義務付け。その間にPCR検査をしまくって、5日間連続で新規感染者ゼロを確認して外出規制を緩和、さらに9日間はマスク義務付けを続行して移行期間とし、2月14日に通常に戻りました。複数の感染者が出た他州からの立ち入りを制限することも。この徹底した方針でマクゴワン州首相は高い支持を得ています。

 長男は日本にいる私に、大学の様子を話してくれます。長男と同じ講義を履修している学生の中には24歳の人も、30歳の人も、10代の子供がいる人もいるとのこと。オーストラリアでは、高校を卒業した後旅に出る人や、働いてから大学に入る人、大人になってから新たに学び直す人も珍しくありません。

 留学生が多く、学内にはベジタリアンのカフェやハラル認定された食品を出すカフェ、ケバブのお店もあるそうです。高級車でキャンパスに乗り付けるお金持ちの留学生がいる一方で、オンボロ中古車を大切にする地元の学生たちも。

「大学に入って、世の中には本当にいろんな人がいるんだなあと思った」と長男。オーストラリアでは、18歳からは成人です。大人の仲間入りをした長男の目に映るキャンパスの風景が、ますますカラフルで発見に満ちたものでありますように。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年3月22日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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