愛宕山開発は今年3月、着工から23年を経て完了する。

「どこで線引きをするかにもよるが、基地を含む総整備費は、思いやり予算も含め最大8千億円くらいになるだろう」

 と元市議の田村は話す。一方で、基地のある自治体に防衛予算から支給される「再編交付金」で、18年から市内小中学校計46校の給食無料化も開始。市民への恩恵によって基地反対の声は封じ込められてきた。

■市長交代で一体化進む

 日米一体化が顕著になったのは、現在4期目の福田良彦市長が艦載機受け入れ反対の井原勝介前市長を破って当選した08年からだ。「基地との共存」を掲げているものの、駅前の商店街は寂れ、人通りも少ない。人口は約13万人。10年前から1万5千人以上減少した。「共存」というより「依存」の色合いが強い。

 基地の機能拡大による騒音被害は岩国市内だけでなく、周辺自治体や他県にも広がる。

 岩国から電車で30分ほどの広島県廿日市市の「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会」は16年前から国や岩国市に騒音被害の改善と不安の解消を求めてきた。20年10月20日、同会のメンバー6人が防衛省中国四国防衛局を訪れ、「F35B追加配備撤回」と「カリフォルニア州での事故の原因究明、安全確認までの飛行停止」の要請書を手渡した。防衛局は「追加配備は日米同盟への米国のコミットメントを示し、撤回は考えていない」「直ちに機体に疑念があるものではない」と回答するにとどまった。会の共同代表、坂本千尋(67)は、「いままでで一番対応が悪かった。アメリカが大丈夫と言っているから大丈夫だと言っているだけ」と失望感をあらわにする。

 広島・島根両県にまたがる自衛隊の空域の一部の高度を米軍が運用する取り決めだが、広島県北広島町では低空飛行が頻繁にみられる。坂本によると最近は鳥取県からも米軍機の騒音情報が入り、被爆地広島市の上空を飛行するオスプレイも目撃されているという。

次のページ