所属軍用機120機で、沖縄県の嘉手納基地をしのぎ、極東最大級の米軍基地となった岩国基地。対中国の拠点として機能を拡大している(写真:戸村良人さん提供)
所属軍用機120機で、沖縄県の嘉手納基地をしのぎ、極東最大級の米軍基地となった岩国基地。対中国の拠点として機能を拡大している(写真:戸村良人さん提供)
JR岩国駅前の中心商店街。日中でも人通りは少ない。10年間で人口が1万5千人以上減少。米軍なしでは経済が成り立たず、基地依存が強まる(撮影/高瀬毅)
JR岩国駅前の中心商店街。日中でも人通りは少ない。10年間で人口が1万5千人以上減少。米軍なしでは経済が成り立たず、基地依存が強まる(撮影/高瀬毅)
AERA 2021年3月15日号より
AERA 2021年3月15日号より

 岩国基地は、所属する米軍用機が沖縄・嘉手納基地をしのぎ極東最大級になった。岩国の重要性は増し、基地拡大はさらに進むとみられているが、様々な問題も生じている。AERA 2021年3月15日号から。

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 戦闘機が着陸態勢に入る。「バシッ」というタイヤの着地音と同時に白煙が上がり、直後、機首を一気に持ち上げた。離着陸を瞬時に切り替える「タッチ・アンド・ゴー」だ。猛烈な爆音を轟(とどろ)かせて頭上を飛び去ると、もう1機が滑走路に向かって高度を下げてくる。2機が交互に離着陸を繰り返す訓練は、月曜日午前9時40分から始まり、11時半まで2時間近く続いた。

 山口県岩国市の米海兵隊岩国航空基地。ここは今や極東最大級の米軍基地である。面積は甲子園球場約200個分。海兵隊の航空基地は、本州ではここだけだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画に報道が集中する陰で、岩国基地は着々と増強されてきた。指標の一つが軍用機の数だ。これまで最大の沖縄の嘉手納基地の約100機に対し、岩国は約120機と、嘉手納をしのいでいる。

■米軍用機は倍増した

 きっかけは2018年3月に行われた米空母「ロナルド・レーガン」の艦載機61機の岩国移転だ。「当初59機の予定が2機増えたんです」。そう指摘するのは、元岩国市議で基地増強に反対する監視団体「リムピース」共同代表の田村順玄(75)。主力は戦闘攻撃機FA18スーパーホーネット。タッチ・アンド・ゴーの訓練をしていたのも同機種である。「レーガン」の艦載機は以前、神奈川県厚木基地を拠点としていたが、北朝鮮の核開発、中国の軍事力増強など東アジアの軍事的緊張を名目に、「岩国は戦略的に重要な位置にある」として移転。岩国を拠点としていた60機と合わせ、一気に所属米軍用機数が倍増した。さらに20年9月、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを16機追加配備し、12機のFA18戦闘攻撃機の運用を停止すると通告があった。

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