「密集状態を回避するために大勢が集まる葬儀や会食が制限される中、参列が困難な人たちの思いを代替するものに準ずるサービスが提供されるようになった。こうしたツールは、出席がかなわない高齢者や海外などに住む近親者に対して、コロナが収束した後も有効です」

 一方、こうした葬儀形態が広まる背景には、コロナ禍で苦境に立たされている葬儀会社の危機感の表れもある。終活関連サービスを提供する「鎌倉新書」が昨年3月に公表した調査によると、約9割の葬儀会社がコロナの影響で「参列者が減った、または今後減少していく」と回答した。

「厳しいです。生き残れるかどうかの瀬戸際です」。都内にある葬儀社の幹部は打ち明ける。

 コロナ前から葬儀は、高齢化や価値観の変化を背景に、身内だけで故人を見送る「家族葬」と通夜・葬儀や告別式を行わず火葬のみという「直葬(ちょくそう)」が葬儀全体の9割近くを占めていた。それがコロナ禍で拍車がかかり、家族葬や直葬がほぼ100%になった。結果、数百人規模で行われる葬儀はほぼゼロに。売り上げは激減し、昨年の6割減だという。

「例えばコロナ前だと会社関係や友人も含め800人近く呼んでいたのが、コロナによって10人くらいで済ませる家族葬になっています。こうした傾向はコロナが収束しても元に戻ることはないと思います。生き残れるサービスが少しでもできないか、模索しています」

 この幹部は、オンライン葬儀などができないか検討していると話した。(編集部・野村昌二)

AERA 2021年3月15日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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