新型コロナウイルスの脅威を前に、お別れの仕方が変わってきた。通常のお見舞いはもちろん、愛する人の最期に立ち会い静かに看取ることすら困難になっている。弔いの在り方も大きく変わり、それに伴い様々なサービスに注目が集まっている。

 オンラインで葬儀を配信する「オンライン葬儀」もその一つ。遠隔地での葬儀や高齢者の参列をサポートするために登場していたが、コロナ禍の感染対策として葬儀会社だけでなくIT企業など他業種からも参入している。

■訃報はSNSで伝える

 今年2月から本格的なサービスを開始した「おとむらいネット」。システムを開発したのは、イベントや店舗運営などを幅広く展開する「スパート」(本社・東京都新宿区)だ。代表の嶋崎琢也さん(53)は、誰でも気軽に「お弔い」ができる仕組みをオンライン上でつくりたかったと話す。

「特にコロナで、親しい方のご葬儀への参列機会を失った方も多いはずです。それならば、どの葬儀社に依頼をしても、無料で参列がかない、香典決済などを行った場合にのみ手数料が発生するオンライン葬儀会場を構築しようと思いました」

 操作は簡単だ。サービス利用者は葬儀会社を通して利用することになるが、利用者には専用URLとQRコードが発行され、訃報をメールやSNSで故人の知人に伝えることができる。葬儀期間を長めに設定でき、その期間内はどこからでもアクセスが可能。システム利用料は無料で、香典のカード決済から手数料5~15%が引かれる。

「SNSで拡散し、参列者の裾野が広がり、ご遺族からすると参列者が増えて多くの方に見送っていただけます」(嶋崎さん)

 同サービスの関東エリアの問い合わせ窓口となっている葬儀社「エバーラスティング」(本社・東京都文京区)代表の高野浩樹さん(55)は言う。

「オンラインで時間も場所も距離も気にしなくていいので、コロナ禍で利用してほしい」

■葬儀会社の厳しい事情

 葬送専門雑誌「SOGI」元編集長で葬送ジャーナリストの碑文谷創(ひもんやはじめ)さん(75)は、コロナ禍で注目されるようになった葬祭サービスの変化は2000年以降に始まった葬儀の個人化の流れの中で起きていると指摘する。

次のページ