日典ラサが導入した「ドライブスルー焼香」。「密」になる心配はなく、「新しい生活様式」の一つとして注目される(写真:各社提供)
日典ラサが導入した「ドライブスルー焼香」。「密」になる心配はなく、「新しい生活様式」の一つとして注目される(写真:各社提供)
「おとむらいネット」のオンライン葬儀のイメージ。サイトには、遺影や喪主からの挨拶文も掲載される(写真:各社提供)
「おとむらいネット」のオンライン葬儀のイメージ。サイトには、遺影や喪主からの挨拶文も掲載される(写真:各社提供)

 人が集まる葬儀を避けたいが、お別れはしたい。そんなコロナ禍の切実な思いに応えた新しいサービスに注目が集まっている。AERA 2021年3月15日号から。

【写真】オンライン葬儀のイメージはこちら!

*  *  *

 群馬県のとある葬儀場。1台の車がゆっくり受け付け台の前に横付けすると、ドライバーが車の窓を開けた。すると係員が、記帳カードと香炉を載せたお盆をドライバーに渡す。ドライバーは車から降りることなく、車内で記帳と焼香、合掌を済ませ、香典と一緒にお盆を係員に戻した。係員から香典返しを受け取ったドライバーは窓を閉め、去った。この間、約1分。ドライバーは式場で葬儀が行われている亡くなった人の弔問客だ。

「車の中からでもご焼香をしていただければ、その人なりの心の整理ができるのではないかと考えました」

 と、この「ドライブスルー焼香」を導入した葬儀場「日典ラサ」(本社・高崎市)葬祭部長の大塚一正さん(58)は言う。

 コロナ禍にあって「密」になる葬儀場への参列をためらう人は少なくない。しかし、最後のお別れはしたいと考える人は多くいる。そうした人たちの機会喪失を防ぐために何ができるかを考え、ドライブスルー方式を導入することにしたという。

■オンライン葬儀が出現

 車の中から故人とのお別れをする「ドライブスルー葬儀」は2017年に長野県上田市の葬儀場が足腰の弱い高齢者の負担を減らそうと始めて話題となった。日典ラサのドライブスルー焼香も、それをヒントにしたという。

 昨年8月中旬から高崎市、前橋市、太田市など同社の葬儀場で始めると、評判は口コミを中心に広がった。今では1カ所の葬儀場で月30~50件近い利用がある。利用者からは「大切な方にお別れが言えました」という感謝の言葉をもらうという。

「葬儀は弔う人びとの気持ちで成り立っています。ドライブスルーであっても、故人を偲び、手を合わせることで、大切な人への心の整理ができるのだと思います」(大塚さん)

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら
次のページ