西村さんの高校では、昨年6月の休校明けから、従来の制服だけでなく私服の着用も可能になった。コロナ禍で、ウイルスの付着した服を洗濯したい生徒に配慮してだ。西村さんは言う。

「制服は学校の規律を保つうえで大事とされてきました。ところが、制服の中に私服の生徒が交じっても学校が乱れることはありませんでした。夏場、換気のためエアコンを十分に利かせられず、授業中の水分補給も可能になりましたが、何の問題も起きませんでした。学校は少しくらいゆるくたって大丈夫。風通しの良さをむしろ感じました」

 私服が可能になったことで、身だしなみ指導もなくなった。「ブラック校則」と呼ばれる、下着の色やスカート丈などの過度のチェックも、服を自由選択にすれば学校現場からなくなる。

「コロナによって起きたいい変化を校則や学校のあり方を問い直す契機にしたい。制服の見直しを起点に、多様性を尊重する“令和の校則”を再構築していきたいのです」(西村さん)

 西村さんは3月中に署名を文部科学相に提出する予定だ。署名のコメント欄には、さまざまな声が寄せられている。

<学生服が肌に合わず苦しんだ過去がある。着たい人は着ればよく、着たくない人は着なくていいというルールを、これからの子どもたちのためにも全国で徹底してほしい>
<適切な体温調節のためにも、さまざまなジェンダーや考え方の生徒を許容するためにも、服の選択制は理にかなっている>
<私は母校の制服が大好きなので賛同しかねるが、公立は自由にすべきだと思う>

一方、制服のメリットとしてよくいわれるのが「家計負担の軽減」「家庭の経済力の差が見えにくい」だ。だが、千葉工業大学助教で教育行政学が専門の福嶋尚子さん(39)はこれを疑問視する。福嶋さんは、公立中学校の事務職員・柳澤靖明さんとの共著『隠れ教育費』で制服の費用を検証した。

「制服は決して安くありません。ブレザーとズボン、スカートの基本セットが約3万円。プラスして夏服、シャツやベスト、ネクタイ、リボンなども必要で、さらに学校指定の体操着やカバン、上履きなども加えると約8万~9万円します」(福嶋さん)

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