神奈川県の大学2年生の男性(20)も、小学校の教員を目指す一人だ。中学・高校と、母校の学童保育でボランティアをしてきた。そこで子どもたちと関わる中で、周囲の大人からも教員が向いているのではないか、と言われてきた。

「倍率が低くて試験に合格しやすいという意味では、ラッキーだとは思います。ブラック職場で人気がないのも寂しい話ですが、今はそっちの気持ちの方が少し強いですかね」

■志望学生足りない熱量

 ただ、気になることがある。男性のように学生時代に教育系のボランティアを経験する人が、周囲には少ないように感じているという。学校現場で働きたい。そんな「熱量」を感じる人が周りの志望者に少ない、と話す。

 ただ、このまま各地の採用試験が低倍率で推移するわけではなさそうだ。

 妹尾さんによると、東京や神奈川などの大都市圏では大量採用の時期は過ぎ、需要は一段落しつつある。一方で、見通しは不明ながら35人学級による需要増の影響も出てきそうだ。地方ではこれから大量採用というところもあり、しばらく倍率が低いままのところと、倍率が上がっていくところに分かれていくのではないかとみる。

 見通しは容易でない。だが、倍率に関係なく、少なくとも「熱量」がある人たちが、そこには集まってほしい。(編集部・小田健司)

AERA 2021年3月15日号より抜粋