ビジネスに特化したSNSを展開するリンクトインが20年に実施した「日本女性の仕事と生活に関する意識調査」では、「女性であるというだけで不当に扱われた」と感じる場面(複数回答可)のトップは「家事分担の話し合い中」(33%)で、2位の「職場」(30%)を上回った。さらに、仕事の機会を妨げているもの(複数回答可)として、「家庭内でのサポートが足りない」と回答した女性は44%で、「組織内でのサポートが足りない」(24%)の2倍近かった。

 つまり、ジェンダー不平等の元凶は「家庭内」にあるとも言えるのだ。リンクトインの広報担当者は言う。

「女性であるがゆえに家事育児の負担が重くのしかかり、そうした家庭内の不平等が女性の仕事の機会や昇進の障壁にもなっています。その結果、4割を超える女性が『もし自分が男性だったら仕事でより良い業績を出せる』と考えています」

 この家庭内男女不平等を生んでいる原因の一つが、「稼ぐのは男の責任、子育ては女の責任」という性別役割分業意識だ。30年以上共働き夫婦の家事分担について研究を続ける日本女子大学の永井暁子准教授(家族社会学)は言う。

「男性も家事育児をするのが当然という意識が高まってきた一方で、『世帯の稼ぎ主は夫』という稼得責任への意識の強さは男女ともあまり変わっておらず、家事育児などのケア役割は女性に、仕事については男性に偏りがちです」

■夫は加点で妻は減点

 東京都内に住むフリーランスライターの女性(44)も「家事育児は女の役割」という意識が抜けない夫に悩まされている。

「夫は、家事育児に関して自分のことは加点法、私のことは減点法で考えるので、私は『やって当たり前』で感謝もされず、やらなかったときだけ失敗をつつかれます」

 性別役割分業の意識が浸透しているのは日本だけではないと、アフリカ出身の夫を持つ滋賀県在住の女性(46)は言う。

「フルタイム勤務なのに、家庭のことはすべて私が担当という状態で、『あなたがやらないことは、全部私がやらなければいけないんだよ』と話したらやっと理解できたようで、掃除を少し手伝ってくれるようになりました。夫の家庭も家事育児はすべて義母が担っていたので、彼自身もロールモデルがないのだと思います」

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