緊急事態宣言が前倒しで解除され、夜の街に人が戻り始めた大阪市内。対策の緩みによる感染者数の「リバウンド」も懸念される/3月1日 (c)朝日新聞社
緊急事態宣言が前倒しで解除され、夜の街に人が戻り始めた大阪市内。対策の緩みによる感染者数の「リバウンド」も懸念される/3月1日 (c)朝日新聞社
AERA 2021年3月15日号より
AERA 2021年3月15日号より

 大阪、京都、福岡などで緊急事態宣言が前倒し解除された一方で、東京、千葉、神奈川、埼玉の1都3県では解除が再延長された。しかし自粛生活に疲れを感じ、気が緩み始めている人も少なくない。東京都医師会の尾崎治夫会長は、こうした状況でこそムードを変えるトップの言葉が必要だと指摘する。AERA 2021年3月15日号では尾崎会長に話を聞いた。

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 緊急事態宣言を2月28日に「1週間前倒し解除」した大阪、京都、愛知、福岡など6府県は大丈夫なのか。

 菅首相は26日の会見で、先行解除による感染再拡大の懸念について問われ、「基準はクリアしているわけでありますから」と、政府の分科会が感染状況を判断する目安として定めている「1週間あたりの新規感染者数」「ベッドの使用率」など六つの指標を6府県がクリアしていることを強調した。

■具体的な目標設定語れ

 だが、尾崎会長はそこに「指導者のメッセージ不足」という問題を見たという。必要なのは、もっと具体的な「目標設定」だと指摘する。

 たとえば、今後予定されるワクチンの接種。感染の波が来ている状態では、集団接種を行って大丈夫かという議論になる。

「このくらいの感染者数まで下げることができれば、ワクチン接種をスムーズに進められる。あるいはオリンピック・パラリンピックも何とか開催の方向性が見える状況になる。そんな目標を示し、期待を持たせることで、みんなでもうちょっと辛抱してがんばりましょうという強力なメッセージが必要です」

 残念ながら、菅首相の言葉からはそのようなメッセージは伝わってこない。

「ただ『基準をクリアしたから解除します』では、『で、1週間前倒しすることに何の意味があるの?』という疑問が残ってしまいます」(尾崎会長)

 尾崎会長は、新規感染者数、入院患者数、重症者数などについて、「〇〇をやりたいので、そのためにこの数値まで落とそう」という具体的な目標を出すことは可能だ、とみる。もちろん、分科会メンバーや様々なシミュレーションをしている専門家の意見を聞くことが前提だ。

「そのうえで、『いちおう目安は何日までだけど、目標が達成できなければさらに延ばしてがんばりましょう』みたいな話に最初からしておけばいい。みんな延長は嫌だし、早めに目標数値まで落とすためにもう少し我慢しようよという気持ちになるのではないか、と私は思ってます」(同)

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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