政策研究大学院大学の土谷隆教授が示した東京における新規感染者数のシミュレーションも、その一つだ。「緊急事態宣言を3月7日に解除し、その後何も対策をとらない」場合、4月中には1日の新規感染者数が1千人を超え、5月中に2千人超えもあり得るとする衝撃的な内容だ。

 尾崎会長は、緩みに加え、感染力が強いとされる変異株のリスクも指摘する。

 変異株の調査は通常のPCR検査以外にウイルスの遺伝情報を調べる「ゲノム解析」などが必要なこともあり、日本では実態の把握が十分に進んでいない。国は全国の地方衛生研究所に、新規感染者の約5~10%に変異株の確認検査を実施するよう要請しているが、尾崎会長は「もっと広い範囲で検査し、全体の中での変異株の状況をきちんと把握できるシステムを作るためにも、感染者数がもっと減っていく必要がある」と指摘する。(編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年3月15日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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