相模原中等教育/美術の授業。アニメで楽しくやりとり。音楽はリコーダーの吹き方を実演するなど、各教員が工夫を凝らした(写真・同校提供)
相模原中等教育/美術の授業。アニメで楽しくやりとり。音楽はリコーダーの吹き方を実演するなど、各教員が工夫を凝らした(写真・同校提供)
AERA3月8日号の特集「中高一貫の真価」から
AERA3月8日号の特集「中高一貫の真価」から

 コロナ禍の1年。各学校は生徒や教師がさまざまな工夫を凝らして対応した。しかし、難関校を中心に「受験地図」には変化があらわれた。AERA 2021年3月8日号では「中高一貫の真価」を特集。厳しかったコロナ禍の1年を、実力校はどうとらえたのか。

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 安田教育研究所の安田理代表によると、今年は受験生1人当たりの併願校数が減っており、なかでも全体的に最難関校が減少しているという。

「感染リスクを下げるために受験回数を減らそうとすると、まず合格の見込みが低い難関校をあきらめます。1都3県すべてにその傾向が見られました」

 東京の最難関校・開成の志願者は、昨年の1266人から1243人と微減だったが、多くの受験生が試験を欠席するという「珍現象」が起きた。中学入試は願書だけ出して受験しないことは珍しくないが、開成は例年100人にも満たない。それが今年は200人近くが欠席。その理由をSAPIXの広野雅明本部長はこう話す。

「開成には毎年関西や九州など、地元の受験を終えた生徒が腕試しに試験を受けにやってくるのですが、今年はコロナの影響で取りやめた受験生もいたようです」

 同校は昨年10月下旬の段階で早々に2月23日に追試を行うことを発表していた。「幸い追試験を行った生徒はいませんでした」と同校の入試実行委員長の神田邦彦教諭は話し、こう続ける。

「受験生は大変な努力を重ねて準備している。コロナによって受験の機会を奪ってはならないと考えました」

■「園芸セット」が届く

 最難関校に代わって、受験生が増えたのが準難関校だ。鴎友学園女子の志願者は前年より209人増えた。前出の北所長は「鴎友学園女子には園芸という特徴的な授業もあり、主要5教科以外の授業も重視している。そういう教育方針が、受験生や保護者から支持されたのでしょう」と話す。

 園芸の授業では鉢や土、ラディッシュの種などの園芸セットを送り、育て方を指導する動画を配信した。生徒から段ボールを開ける動画が先生あてに届くなど、教員と生徒双方で動画が交わされたという。

「教員の作る動画は、画面の向こうに生徒がいます。コロナ禍で自宅に閉じこもっている生徒を笑顔にしたい。そんな思いでした」(入試広報部・若井由佳教諭)

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