多分、フリースクールで音楽を始めたという、環境的なものが大きいと思う。学校に行かない理由もみんなそれぞれ違う。そして距離感みたいなもの。あなたと私は分かり合えるか分からないけど、でもこの場を共有していて、あなたの、そして私自身の幸せも願っている。そんな思いで曲を作り始めた。だからどの歌も、端的に言うと「願うこと」がテーマなんです。それこそ「朝顔」ですよね。

 作詞って箱庭療法に近い気がする。メロディーのなかにどんな言葉を置くか。そこには自分すら気づいていなかった思いや願いが色濃く出る。その時はわからなくても、後でビックリすることはよくありますね。

──昨年は単独ライブが中止になるなど、活動を制限された一年となった。だが、コロナ禍の中で、見つけた希望がある。

折坂:自分がどう生きるかとか、あるいは生まれたからにはいつかは死ぬということ。誰もが背負う怖さや孤独みたいなものから、今までは目をそらせてこられた。僕も定期的にライブをやって反応をもらったり、終わったら一緒に演奏した人達と乾杯をしたりして、それを見ないようにしてきた気がする。でも、今は直視せざるを得ない。それはすごくつらいことだけど、暗い闇の部分に目を凝らしたときに、ものすごく輝く表現が生まれてくる予感もあって。自分からも周りからも何が生まれるのか。今はそれがすごく楽しみです。

──音楽以外の生活を尋ねると、パッと優しい表情になった。

折坂:家に帰れば4歳の子どもがいるので引っかき回されてます(笑)。趣味もないので、歌を作る以外はそれが僕の毎日ですね。「ここまで出来たからいいや」と思って歩みを止めるのではなく、何かを作っては一喜一憂し、世間からどう思われるかビクビクしながら(笑)、死ぬまで表現者としてあがけたらいいなと思います。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2021年3月8日号