サーモンのお寿司
サーモンのお寿司

 このコラムで以前、鮮やかな身色の鮭が、実は白身魚だということを書きました。そして、元々白身魚である鮭の身を赤く染めているのは、「アスタキサンチン」という物質だということもご紹介しました。

【写真】アスタキサンチンがたっぷり含まれたお寿司は?

 少々言いにくい名称のアスタキサンチンは、エビやカニの赤いしっぽや甲羅に多く含まれており、鮭がこのアスタキチンサンを多く含むオキアミなどを食べることにより、体内に蓄積していき、身が赤くなってくるんです。

 このアスタキサンチン、鮭の産卵にも深くかかわっているんです。

 鮭は産卵期になると、生まれ故郷の川へ戻り、さかのぼって産卵をし一生を終えます。それまで深い海の中にいた鮭が浅い川をさかのぼる際には、大量の紫外線にさらされることになります。

 紫外線によって我々人間も皮膚がんなどのリスクが高まるように、鮭も紫外線にさらされることで様々な悪影響が出てきます。その紫外線から鮭の体を守っているのが、ビタミンEの1千倍もの抗酸化力をもっているアスタキサンチンなんです。

 そして産卵の際には、体内に蓄えていたアスタキサンチンを、卵(イクラ)に与えて息絶えるんです。イクラが赤いのも、多くのアスタキサンチンを含んでいるからなんです。

 そして川の浅瀬に産み付けられたイクラも、アスタキサンチンのもつ抗酸化力によって、太陽光の紫外線から中身を守っていると言われています。
 
 そんなに抗酸化力があるアスタキサンチンを、我々人間も積極的に利用しようという取り組みも、もちろん進んでいます。

 アスタキサンチンを濃縮したサプリや、肌に塗る化粧品も発売されています。肌に塗ることにより、紫外線によるシミの発生を抑えることができるとのことで、鮭やイクラと同じ効果を期待できるということのようです。

 こんなに効果が高いのであれば、鮭やイクラを食べることで、サプリを飲むと同じ効果が期待できると思いますが、そう簡単ではなさそうです。

 というのも、一定の効果がでるためには、1日当たり最低でも6ミリグラムのアスタキサンチンを摂取することが必要とのこと。この量をイクラで摂取するためには、どんぶり4杯のイクラを食べる必要があるとか……。

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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