全豪オープンで優勝した大坂なおみ。大坂は試合後、観客に「見に来てくれてありがとう。みなさんからエネルギーをもらうことには本当に多くの意味があります」と語った/2月20日、オーストラリア・メルボルン(gettyimges)
全豪オープンで優勝した大坂なおみ。大坂は試合後、観客に「見に来てくれてありがとう。みなさんからエネルギーをもらうことには本当に多くの意味があります」と語った/2月20日、オーストラリア・メルボルン(gettyimges)

 大坂なおみが全豪オープンを制した。その先にあるのは「母国での五輪」。歴史を作ることが目標だという彼女は、五輪を今年のハイライトに掲げる。AERA 2021年3月8日号の記事を紹介する。

【松岡修造が「初めて見た」と称賛した見事な“適応力”】

*  *  *

 7分の4の強さ。

 大坂なおみ(23)が全豪オープンを制したときに浮かんだフレーズだ。そして、この分数に、仕切り直しとなる東京五輪の金メダルが見えてくる。

 クイズみたいに書き出したが、理由が二つある。

 まず一つ、大坂がグランドスラムと呼ばれる4大大会で優勝するのは2018年全米、19年全豪、20年全米につづいて4度目だった。4大大会に限れば、18年以降に開かれたハードコートの大会7度のうち、4度栄冠に輝いた。一方、ボールの弾み方やフットワークの使い方が異なる赤土の全仏、芝生のウィンブルドンではいずれも3回戦進出が最高だ。要するに、幼少のころから慣れ親しんでいるハードコートにはめっぽう強い。公式戦は現在21連勝中(棄権はのぞく)。東京五輪が行われる有明テニスの森公園の会場は、その得意なハードコートとなる。

■私の今年のハイライト

 ハード面での優位性に加え、大坂が照準を定めた大会で見せる集中力というメンタル面にも触れておきたい。プロ転向後のツアー優勝は通算7度で、そのうちの4度が4大大会なのだ。元々、世界ランキング1位の称号を取るためにめいっぱい日程を詰め込み、世界を行脚するタイプではない。それにしても、ツアーでの通算優勝回数の6割近くを4大大会が占める選手はほかに見当たらない。

 テニスは陸上、水泳など五輪の花形競技の選手と違い、五輪を究極の目標に置かないのがふつうだ。毎年ある4大大会が少年少女時代からの憧れの舞台というケースが一般的だ。

 そんな中、大坂は今回の全豪が開幕する前の記者会見で、コロナ禍で開催が危ぶまれる五輪について、こう語った。

「もし、五輪が開かれるとしたら、断然、私の今年のハイライトになる」

 全豪への抱負を語る場で、ここまではっきり言うのは、少し意外だった。

 決勝進出を決めた後の記者会見での言葉も印象的だった。

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