■力のある前代表に頼る

 秋田前代表が2019年に特別顧問に就任した業界団体「日本養鶏協会」(東京都)の問題点を指摘するのは、北海道大学大学院農学研究院研究員で僧侶の大森隆さん(74)だ。同会は、養鶏経営の安定や養鶏産業の健全な発展に寄与することを目的に、国の委託で生産調整を担い、需給や価格の安定化、流通の改善などを図っているという。しかし、期待される役割の大きさに実態が追いついていないと大森さんは言う。

「私の見る限り、役員に大手ではない、あまり力のない人たちが就いて運営しています。これでは業界団体として弱体です。会員からも、大規模業者の意見集約ができていないなどと批判の声も上がっています」

 そうした中、日本養鶏協会は2019年6月の定時総会で、秋田前代表に特別顧問に就くことを要請。業界紙「鶏鳴新聞」の同年7月5日付の記事によると、総会の出席者から「直面するAW基準と、経営安定対策事業を中心とする低卵価対策の実現に向け有力者の力を借りることも必要ではないか」「アキタフーズの秋田社長(当時)に特別顧問を引き受けてもらって指導いただけたらと思う」などの意見が出たという。

 協会の懸案には、いずれも後に、秋田前代表が吉川氏に要望したとされるAWへの対応や鶏卵生産者経営安定対策事業の新たな制度設計があったことが分かる。なお、特別顧問の職掌について、同会事務局は「会長の諮問に応じるだけの立場で、その他何ら活動する立場にない」と断言する。

 大森さんは鶏卵業界と事件の関係についてこう指摘する。

「鶏卵業界として、政治家に金を渡すことを望んだわけではなかったはずです。ただ、個人的に力のある人を担ぎ上げて、課題に対処しようとする日本養鶏協会の土壌そのものにも、問題はあった。また担ぎ上げられた人が、協会の特別顧問の肩書を逸脱する行動をして、事件を招く結果になったのでは」

 定時総会には、秋田前代表が現金を渡したと供述しているという西川元農相(当時は内閣官房参与)や高級料亭での会食に招かれた農水省幹部ら(2月25日に減給などの処分)が来賓として参加していた。

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