東北新社からの「1人7万4千円」という高額接待を国会で陳謝した山田真貴子・内閣広報官。菅首相が重用する側近の一人だ/2月25日、衆院予算委 (c)朝日新聞社
東北新社からの「1人7万4千円」という高額接待を国会で陳謝した山田真貴子・内閣広報官。菅首相が重用する側近の一人だ/2月25日、衆院予算委 (c)朝日新聞社
AERA 2021年3月8日号
AERA 2021年3月8日号

 総務省の大臣秘書官から東北新社に移った菅氏長男らによる同省幹部への接待疑惑。調査結果が公表されたが処分は大甘で、身内に甘い菅首相の姿勢が露呈した。AERA 2021年3月8日号の記事を紹介する。

【図を見る】総務省幹部らが東北新社から接待を受けた場所と金額の一覧はこちら

*  *  *

 総務省は2月22日、「倫理規程に違反する疑いがある会食一覧」というリストを発表した。菅義偉首相の長男である菅正剛氏が勤める「東北新社」から総務省幹部らが受けた接待の詳細が記されており、銀座、赤坂、六本木などの歓楽街にある高級飲食店で計39回の接待が行われたことがわかる。

■関係取り持った正剛氏

「意見交換」「親睦会」「忘年会」「暑気払い」……。そんな名目で開かれた会食で総務省幹部ら13人が「おごられた」総額は、57万7005円。ほかにお土産代、タクシー代なども記されており、菅正剛氏ら接待する側の飲食代を含め、東北新社側が支払った金額は190万円を超える。

 東北新社の出席者は、当時の二宮清隆・東北新社代表取締役社長、三上義之・取締役執行役員(株式会社囲碁将棋チャンネル取締役、株式会社スター・チャンネル取締役兼務)ら。そして、総務省と同社の間を取り持ったとされるのが、「首相の長男」の看板を背負う菅正剛メディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長(株式会社囲碁将棋チャンネル取締役兼務)だった(いずれも現在は役職を辞任)。

 正剛氏は菅首相が総務大臣だった時、大臣秘書官に抜擢された。その後、霞が関から東北新社へと転職している。

 衛星放送は総務省の許認可事業だ。総務省は東北新社の子会社である「株式会社東北新社メディアサービス」「株式会社スター・チャンネル」「株式会社囲碁将棋チャンネル」が、放送法に基づく衛星基幹放送の業務認定を受けている会社であることを認めている。会食にはこれらの会社の役員が複数参加しており、東北新社側が衛星放送事業を有利に進める目的で、総務官僚に接近したことが分かる。

 まさにその認定を行う情報流通行政局の秋本芳徳局長(当時)や衛星・地域放送課長は言うまでもないが、事実上の総務省ナンバー2だった谷脇康彦・総務審議官ら他の幹部にとっても、東北新社が「利害関係者」にあたる疑いがあることは明らかだ。国家公務員倫理規程違反の疑いがあるにもかかわらず、幹部たちが会食に参加した理由が正剛氏の存在だったことは想像に難くない。

次のページ