そういう状況の中で、人材マーケットで強いのはどういう人なのか。一言で言えばそれは「学び続けている人」です。DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)の進展など凄まじい勢いで世の中が変化している中で、学び続けない人は生き残れません。

 学ぶ中身ですか? それは人それぞれです。経理やIT関連の仕事をしている人なら、米国公認会計(CPA)やセキュリティ関連もいいでしょう。一方営業畑の人なら、特段資格などでなくても、文化や歴史などのいわゆる「教養」を深め、政治経済のグローバルな潮流について常に情報を集め、アップデートし続けていくというのもありでしょう。

 オンラインで働くことが当たり前になり、今後5G、6Gが普及すれば、働く場所や時間の制約がますますなくなっていきます。そこで問われるのは「発信力」と「俯瞰力」です。海外の人から日本国内で起きている事象を聞かれた時に、文化や歴史的な背景も含めてきちんと語れるかどうか。あるいは技術系の人なら、最新のテクノロジーの動向などが話題になったときに、「5年後10年後、自分はこうなると見ています」といったようなことを俯瞰して語れるかどうかが重要になってきます。

 私自身はヘッドハンティングの現場で候補者と面談する際は、その人が今の会社でどういう仕事をして、何人くらいのマネジメント経験があるか、といったこと以外に、どのくらい高い視座で物事を見ているかに注目しています。例えば、化粧品業界で働いている人であれば、「資生堂が最近、日用品部門を売却して高価格帯に事業を集中させるというニュースがありましたね」と話を振ってみます。それに対して、自社のトピックしか話せない人は評価しません。日本の化粧品業界の将来をどう見るか、海外ブランドなど世界的な潮流がどういう方向に向かいそうかなど、マクロな視点で語れる人は高く評価しますし、そういう人は高い確率で転職も成功しています。

 新卒の学生さんにとってはまだ遠い話かもしれませんが、ゆくゆくはそういう人材になれるよう頑張ってほしいですね。

(構成/編集部・石臥薫子)

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