新卒採用においては、コロナ禍で採用がオンライン化したことがプラスに働いています。お付き合いのある地方企業のオーナーからは、「いままでは都市部から学生をとりたくても、説明会や面接のために会場を設けるだけでも一苦労だった。でもオンライン化が進んだおかげで、地方にいながらにして都市部の学生に容易にアプローチできるようになり、今までならとても出会えなかったような優秀な学生が採用できた」という話をよく聞きます。地元の大学に通う学生は、コロナ禍で地元志向を強めています。その意味で、地方企業はうまく魅力をアピールできれば、いい人材を取れるチャンスです。

 ただし、中長期的にみると、企業にとって新卒を一括採用するメリットはどんどん失われています。学生を一斉に集めて採用し、一斉に研修できるという点で一括採用は効率的だったのですが、コロナを経験した今、一斉に集まること自体が難しくなっていますからね。さらに昨今は、コストと時間をかけて新卒をとっても3年で3割が辞めてしまいます。待遇も良く優秀な人材が集まることで有名な人気企業であっても、離職率はそれほど変わりません。結果として企業の中では、「歩留まりが悪すぎる新卒を採るよりも、他の会社に育てていただいた人を中途で採用したほうが得策」という考えが広まっています。

 伝統的な企業の中でもキリンビールのように、社長自ら「中途が社員の半分になってもいい」と公言するような会社も出てきています。いまは新卒についても、これまで中途を対象にしてきたジョブ型の採用やリファラル(社員紹介)採用、スカウトの活用が広がっています。そして新卒でも優秀な層には最初から年収1000万を約束するような企業が増えましたね。脱一括・脱平等の流れはますます加速するでしょう。

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