西田亮介(にしだ・りょうすけ)/1983年生まれ、社会学者。東京工業大学准教授。近著に『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』(撮影/写真部・張溢文)
西田亮介(にしだ・りょうすけ)/1983年生まれ、社会学者。東京工業大学准教授。近著に『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か』(撮影/写真部・張溢文)

 コロナ禍で、国や自治体からは「20代」や「若者」に強く自粛を呼びかける言葉が見られた。“自粛しない若者”の姿も報じられ、自粛に耐える若者には違和感を覚える人も。若い世代が抱えるやるせなさをどうしたらいいのか。AERA 2021年3月1日号で、社会学者・西田亮介さんに話を聞いた。

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 ワクチンが普及し感染が収まるまでは、感染状況に応じた社会活動の抑制が必要ということは変わらないはずです。いまの状況で自粛をやめれば、感染者数は再び増え、飲食店や宿泊観光業は倒産の危機にさらされ、昨年、エアラインなどの採用が止まったように就職活動等への影響が長期化しかねません。

 自粛で割を食っている、という気持ちはわからなくもありませんが、社会経済活動を抑制しないことは、自分の首を絞めることです。年長世代のために自粛するのではなく、自分たちやその次の世代のために行動変容すると考えたほうが健全です。

 そもそも、自粛とは、自ら進んでつつしむこと。自粛を「要請する」という表現も変ですし、同様に自粛に「見返り」を求めるのもおかしなことです。

 政府のコミュニケーションにも問題があったと考えています。国も自治体も、安倍政権の頃から「医療従事者や高齢者のため」自粛するように呼びかけ続けてきました。若者に対し、自分のために自粛するようにとは呼びかけてきませんでした。他の年代に比べ、若い世代の行動が活発なのは当然です。その動きをどう変容させるか考えるべきだったのに配慮が足りなかった。その意味で若い世代の認識も無理もないかもしれません。

 コロナが収束しても、今回変わった産業構造や慣習の一部は残り、人間関係の築き方やキャリア形成も変わっていくはずです。コロナ禍は全世代に影響し、社会、経済への影響や動向は誰にもはっきりわかりません。誰もが漠然とした不安を感じているはずです。安易に他人の意見に依存したり、他責に陥ったりせずに、各自が自分で考えなければならないでしょう。

(構成/編集部・福井しほ)

AERA 2021年3月1日号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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