「子どもが夢中になって取り組んでいるときには、教師は声をかけません。何をしようか迷ったり、やり方がわからない時に援助します」(櫻井さん)

■大人は環境を整える

 集中して取り組んでいるとき、大人は子どもの集中力を妨げずに見守るべきだとされる。また、モンテッソーリ教育では異年齢で活動する。

「問題も起こりますが、その時は話し合います。大人があれこれルールを決めると『先生がだめと言ったから』で終わってしまうのです」(同)

 豆をスプーンで移し替える子、刺繍をする子。思い思いに行動しているが、教室は統制が取れて穏やかな空気が流れていた。

 モンテッソーリ教育やイエナプラン教育、シュタイナー教育など主流・伝統的な教育法とは異なる理念や哲学に基づく教育メソッドは「オルタナティブ教育」と呼ばれている。オルタナティブ教育を扱った『世界7大教育法に学ぶ 才能あふれる子の育て方』の著書もある、教育ジャーナリストのおおたとしまささんはこう評価する。

「モンテッソーリ教育の核は子ども中心の考え方。子どもが問題を起こしたり、やる気を起こさないのは本人のせいではなく環境がそうさせているからであって、環境を整えるのは、大人の役目だという発想がすばらしいと思います」

 おおたさんは短絡的に「中学受験に有利かしら」という視点で見てしまうと、見誤ってしまうという。

「モンテッソーリ教育の究極の目的は世界平和。子どもの個性を伸ばし、お互いを認め合うような教育をすることで、平和な社会を築くことができるという理念が根底にあります」

(ライター・柿崎明子)

AERA 2021年3月1日号より抜粋