エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
バレンタインの義理チョコについては2018年、GODIVAが出した新聞広告が話題になった。チョコレートを贈るしきたりが職場ではしがらみになることもある (c)朝日新聞社
バレンタインの義理チョコについては2018年、GODIVAが出した新聞広告が話題になった。チョコレートを贈るしきたりが職場ではしがらみになることもある (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】職場での義理チョコはしがらみになることも

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 先週はバレンタインデーでしたね。私は毎年この時期になると、職場での義理チョコ撲滅!と言い続けているのですが、ある調査によると、2021年は「本命」以外には何もしないと答えた人が6割以上だったとのこと。ついにあの不毛な習慣が消えようとしている!と希望を感じました。コロナ禍の影響で、テレワークや手作り・手渡し自粛などが理由のようです。やめる理由が見つかってよかったと思っている人も多いはず。

 そんな中、知人の職場ではまだ女性がお金を出し合ってチョコレートを配っていると聞きました。あのGODIVAが数年前に「義理チョコをやめよう」と言ったのに、変わらない職場もあるのですね。その職場の意思決定層はいまだに「女のコから甘いものとか寄せ書きをもらうとうれしいしな」という感覚なのかな。あの森発言で、男女格差大国であり、男尊女卑の根深く残る国であることを改めて世界に示したこの日本で、もうその昭和の職場のしきたりはやめてほしいものです。日本の職場のジェンダー平等達成度の評価項目に、バレンタインチョコの慣習の有無を入れるといいですね。

 一番エラい人にあげたら他の男性にもあげないわけにいかないし……という女性の事情もあるでしょう。毎年当たり前のように高級チョコの貢ぎ物をもらっている肩書のある男性たちにぜひ言いたい。そのチョコ、いくらすると思う? 女性職員の手取り、知ってる? 3月に妻が買ってきたお菓子を返せばいい? それではあなたを介した見知らぬ女同士の菓子のやりとりですよ。妻もいい迷惑です。毎年毎年、職場の女性が男性上司や同僚に「愛情表現」しなくてはならない歪(いびつ)さにも、気付いてほしい。「これ、もうやめよう!」と言って下さい。来年こそはこの話を書かなくてよくなることを心から願います。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年3月1日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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