英王室は、昨年12月にウィンザー城でシニア・ロイヤルが勢揃いする珍しい機会をもった。エリザベス女王を真ん中に、チャールズ皇太子夫妻、ウィリアム王子夫妻、そしてアン王女が並んだ。目を引いたのは、そこに女王の三男エドワード王子(56)と民間出身のソフィー妃(56)が顔をそろえたことだった。女王の子ども4人のうち、離婚していない唯一のカップルだ。コロナ禍でソフィー妃の、医療従事者に食事を用意する活動は高く評価されていた。女王は週末に一家を訪ね、お茶の時間をもつ。女王は控えめで誠実なソフィー妃がお気に入りだ。

 離脱したヘンリー王子メーガンさん、未成年買春疑惑で引退した次男アンドルー王子(61)、それに高齢を理由に引退したフィリップ殿下(99)と、このところ立て続けに王室メンバーの数が減少している。公務を担うロイヤルの人手不足が心配されていた。

 エドワード王子夫妻は国民から信頼が寄せられていたから、夫妻をグレードアップして重要な公務を担ってもらうという女王の賢明な“人事”に称賛が集まった。開いた穴はたちどころに埋められたのである。むしろ「やっとソフィー妃の時代が来た」と歓迎する声が上がった。

 コロナの状況次第ではあるが、6月にイギリスでG7サミットが開かれる予定だ。それに先立ち、女王はバイデン米大統領など世界の指導者をバッキンガム宮殿に招待する。キャサリン妃と共にソフィー妃の活躍が今から期待されている。ヘンリー王子とメーガンさんには王室が必要だが、王室は次の手をすでに打ち、公務を滞りなく続行させる準備を着々と整えているのだ。

 そこに飛び込んできたのが、メーガンさんの第2子妊娠のニュースだ。今年のバレンタインデーに発表された白黒写真では、自宅の広大な庭でヘンリー王子の膝に頭をのせて寝そべるメーガンさんのおなかが、ふっくらしている。出産予定日などは明らかにしていないが、性別に関係なく赤ちゃんの王位継承順位は、アーチー君に次ぐ第8位となる。これは王室が称号剥奪を思いとどまる切り札となるだろうか。

 女王にとって、ヘンリー王子はかわいい孫息子には違いない。離脱の際も「愛する家族であることにはなんら変わりがない」と語り掛けた。2人の切望する公爵(夫人)の称号を維持させるのか、国民の声を反映して剥奪に踏み切るのか。4月に95歳を迎える女王の決断に注目が集まる。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2021年3月1日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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