生田斗真さんが主演する舞台「ほんとうのハウンド警部」のポスター
生田斗真さんが主演する舞台「ほんとうのハウンド警部」のポスター

「不要不急」という言葉の中には自分たちも含まれる。そう感じた昨年は、自分を見つめ直す一年だったと語る生田斗真さん。俳優という職業の使命や誇り、30代の葛藤、主演舞台にかける思いを、改めて語った。AERA 2021年3月1日号に掲載された記事を紹介する。

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 生田斗真さん(36)が主演する舞台「ほんとうのハウンド警部」は、英国演劇界の至宝、トム・ストッパードによる戯曲だ。二人の劇評家が舞台上で演じられる芝居を見ているという「劇中劇=メタシアター」の構造。斬新かつ緻密な内容だ。演出を手掛ける小川絵梨子さんとは、2017年の主演舞台「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」(以下、ロズギル)以来の再タッグとなる。

生田斗真(以下、生田):「ロズギル」をやっておいてよかったという感じです。本当に天才が書いた戯曲というか、どこからが現実でどこからが虚構なのかが曖昧で、非常に入り組んだ脚本なんです。演じていくうちに立体的に立ち上がってきて、やっぱりおもしろいなあと。

——生田さんが演じるのは、2番手の地位に甘んじている劇評家ムーン。「上の地位にいきたい、認められたい」という焦りや先輩劇評家に対する嫉妬などが物語に絡む。

生田:ムーンはおそらく30代で、権力を振りかざす人々が上にのさばっていて、この状況をなんとかしたいのに変えられないことにフラストレーションを抱えている。そういう気持ちは僕も共感できるし、突破したい何かをもっている人なら経験したことのある感情だと思います。この作品はトム・ストッパードが30代のときに書いたもので、本人も演劇評論をしていた時期がある。ムーンに自分を投影して書いたのではないか、という説もあるんです。

——自身も30代。舞台との出合いが、俳優としてのターニングポイントになったと話す。

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