石川:逆に、声を上げる人は特別、と線を引かれちゃうとすごく悲しい。私は活動家って言われますけど、何とかしないと平等に生きられないでしょ、誰かがやらなきゃ、という気持ちで声を上げています。本当は人生ほかにやりたいこともありましたけど。こんなことをしなくてもいい社会になったらいい。

■「男性も声」変化起きた

──今回は男性で声を上げた人も多かったように感じます。

伊藤:女性差別の問題は、男性が気にしなくていい問題ではないので、それはすごく自然なこと。今までは「男だから言える立場にない」と言いづらかったのかもしれないけど、そういうのを取っ払って、性別に関係なく意見を持っていいというのが数年の変化で起きてきたのかな。

石川:どうしていいかわからなかった男性って結構多かったみたいで、私のところに「女性差別に反対したいけどどうすればいいですか」と聞きにくる人がたくさんいます。「あなたも声を上げればいいんだよ」と言っても、当事者じゃないからと勇気が出ない。そういう人たちがようやく自分たちの問題なんだと認識し始めた。女性だけで声を上げてきたところから一歩先に行ったという気はしています。

──この問題を取り上げる報道はどうご覧になりましたか。

石川:テレビでこの問題を取り上げても、ジェンダーの専門家が全然出てこなくて。コメンテーターが「周りがみんなで(森さんを)いじめている」といった的外れのコメントをするなど偏見が再生産されていました。ほかの分野だと専門家を呼んで分析や解説をするのに、ジェンダーの問題だとそういうことがなされない。軽く見られているんだなと感じます。

伊藤:うちにはテレビがないのでどんな報道がされていたのかすごく気になっていたんです。ジェンダーの問題としてきちんと扱われなかったのは残念です。

石川:批判と誹謗中傷の区別がついていない人がとても多くて、声を上げると「いじめるな」という話にされてしまう。

伊藤:批判は次のステップにつなげる議論の道であって、誹謗中傷はその人の尊厳や属性を否定したり傷つけたりするもの。全く別物ですよね。

※【伊藤詩織×石川優実対談 森元会長の「わきまえる」発言が映し出す日本社会の「気持ち悪さ」】へ続く

(構成/編集部・深澤友紀)

AERA 2021年3月1日号より抜粋