■ワクチンの普及は迷信との戦い

 英国でも、19世紀半ばまで牛痘を注射すると、牛になるという迷信が広くはびこっていたが、21世紀の現代になっても、SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを注射すると、DNAに組み込まれて自己免疫疾患や癌になるとか、チップが埋め込まれて製薬会社やどこかの政府に個人情報が流れるといったデマをSNSで流す人がいるので笑えない話である。

 もちろん、あらゆるワクチンの通例として副反応が絶対ないとは言えないので十分な情報提供の上で、本人の了承を得て接種することになる。先に接種が始まったWHOやCDCはこのことを繰り返し広報しているし、わが国の厚労省や日本感染症学会も同じ立場である。常識ある大部分の医師は同じ考えであろうし、筆者自身、日々SARS-CoV-2の実験を行い、また疑いも含めてCOVID-19患者さんに接する可能性があることからできるだけ早く受けたいと思う。

 必ずしも健康とは言えないわが身と、愛する家族と教え子、同僚や患者さんを守るためである。

◯早川 智(はやかわ・さとし)/1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に『戦国武将を診る』(朝日新聞出版)など

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早川智

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早川智(はやかわ・さとし)/1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に戦国武将を診る(朝日新聞出版)など

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