清田隆之さん(きよた・たかゆき、40)/1980年生まれ。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。恋愛とジェンダーをテーマにコラムを発信。著書に『さよなら、俺たち』など(写真:本人提供)
清田隆之さん(きよた・たかゆき、40)/1980年生まれ。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。恋愛とジェンダーをテーマにコラムを発信。著書に『さよなら、俺たち』など(写真:本人提供)

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言が批判を受けている。今回の発言を受けて、男性は自分事の意識を持つことが大切だという。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さんが語る。AERA 2021年2月22日号から。

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 政治家のいわゆる女性蔑視発言は、悲しいかな珍しいことではありませんが、今回は男性からもたくさんの批判の声が上がっているように感じます。森さんの発言があまりにひどい内容で、擁護のしようが一切なく、男性にも違和感をはっきり与えたからではないでしょうか。

 私たちのところに寄せられる恋愛相談において、特に若い世代の男性ほど言葉にセンシティブで人を傷つけることを恐れている印象を受けます。良くも悪くもコミュニティーがLINEやツイッターなどSNS中心で、言動が共有されやすく、自分がうっかり加害者になってしまわないよう気をつけている人が多い。そうした世代からすると、今回の発言は相当に時代錯誤で「そんなこと言っちゃうんだ」とびっくりしたと思います。

これまで1200人以上の恋バナを聞いてきましたが、困りごとを掘り下げると、その一つ一つに男性優位の社会構造や性別役割分業からくる意識や価値観があることを強く感じます。

 今回の発言も根っこを掘っていけば人権問題。本来、政治家やリーダーというのは、社会を構成している個人個人の願望や欲求を調整して、より生きやすい環境やシステムを作っていく立場であるはず。でも本音は権力を持った人たちが社会のあり方を決め、下々のものはそれに黙って従ってほしいと思っている。「わきまえる」とか「役立つ」という言葉からも、個人を尊重せず、国益に貢献してもらうことを是とする構造を理想としていることが読み取れます。

 男性の一人として、森さんが日本オリンピック委員会の評議員会であの発言をしたときに出席者が笑ったというところに生々しい問題を感じています。

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