地震の発生メカニズムに詳しい理学博士で、東北福祉大学で防災関連の講義を担当する水本匡起(みずもと・ただき)講師は今回の地震についてこう話す。

「陸側に潜り込む海のプレートが割れたことによっておこる『スラブ内地震』と考えられます。東日本大震災はM9という巨大地震だったので、M7クラスが『余震』になってしまうんです」

 水本さんによると、余震は時間が経つにつれて頻度は減るものの、規模は小さくならないという。今回クラスの地震は「東日本大震災の余震」として今後も起きる可能性がある。

 さらに、「余震の余震」も頻発している。前出の目黒さんによると、昨夜の大きな揺れのあとも地震が続いたという。

片付けをしていても、立て続けに何度か身体に感じる揺れがありました。余震に気を付けなければいけないし、東日本大震災のときは2日前に大きな前震があった。しばらく警戒を続けます」

 水本さんも、「今回と近い規模の余震はしばらくの間起こる可能性がある」と警戒を促す。
 
 東日本大震災から10年を目前にしたタイミングで起きた、大型地震。多くの人の頭をよぎったのはやはり、津波への不安だ。

 石巻市に住む大須武則さん(63)は揺れが収まるとすぐに、妻と近所の災害公営住宅へ避難した。集合住宅タイプの災害公営住宅で、上部のフロアの一部が津波からの一時避難スペースになっている。

「警報などは出なかったし、大丈夫かなとは思ったけれど揺れた時間が長く、震源も近かったので携帯だけ持ってすぐに避難しました。揺れの強さは東日本大震災と比べるとそこまで強くはなかったけれど、市職員の妻は職場に召集されていきましたし、隣の市ですが、避難所開設に向かった知人もいます」

 一方で、大須さんはこんな反省も口にする。

「震災以降、食糧や水、寝袋などの防災備蓄は用意していましたが、持ち出す準備をしていなかった。改めて準備を見直さなければと思います」

 今回は、結果的に津波はなかった。だが、前出の水本さんは「避難行動」と「正しく恐れる」ことが命を守るために必要だと指摘する。

「今回は震源が深く、プレートが跳ね上がるタイプの地震ではなかったために津波はありませんでした。でも、揺れが強かった地域の沿岸に住む人にはまずは逃げるという姿勢があったのか改めて振り返ってほしい。そして、大丈夫だった、よかった、となった後には地震のメカニズムなども学んで、正しく恐れてほしいです」

(編集部・川口 穣)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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