自殺をした女性は、コロナに感染したことで軽いパニック状態に陥り、考え方が悲観的になり、外部の人との交流も制限された中、子どもも感染させたことで追い詰められていったのではないかという。

 孤立して一人で思い詰めた時、どう対処すればいいのか。新行内さんは、誰か1人でいいのでつながることが大切だと言う。

「誰か1人が自分の大変な状況のことをその人の立場に立って考えてくれて、親身に寄り添ってくれると人は救われます。一人で思い詰めている人は、悩みの相談窓口などに早めにSOSを出してください。外出もできず対面で話をするのが難しい中では、代替ツールとしてSNSやインターネットなどで友だちや家族とつながることも孤立を防ぐと思います」

■彼氏とZoomで食事

 冒頭で紹介した男性は、ツイッターで「陽性者仲間」とつながり孤独と不安を乗り越えた。

 陽性とわかったその日、男性は新たにツイッターアカウントを作り発信し、同じ陽性者仲間と励ましあった。

 リプ(応答)をよく飛ばし合った仲間は20人くらい。情報を共有しつつ「療養終わるまで頑張りましょう!」と励ましあった。孤独や不安を呟くと温かい言葉をもらい、「他にも同じように頑張っている人がいる。がんばろう」という気持ちになったという。無事に職場復帰もできた男性はこうアドバイスする。

「ツイッターアカウントはもともと持っていましたが、そちらで呟くよりも新たに作った方が情報を集めやすいと思い新たに作成しました。これは結構、おすすめです」

 室内でできることを用意した人もいた。

 10日間のホテル療養をした千葉県に住む女性(35)は、療養中は気持ちも沈みそうだから気分転換が必要だと考え、療養先のホテルにiPadや10冊近い本などを持ち込んだ。

 療養中は好きな映画を観て本を読み、身体を動かすことも大切と思っていたので、ユーチューブを見ながらマッサージやストレッチをした。パソコンでブログを書いて、コメントをくれた人とつながったのも心が晴れた。特に癒やしとなったのは、オンライン会議システム「Zoom」だった。女性は言う。

「自宅にいる彼とZoomを使い、時間があればオンラインで話をし、できるだけ食事も一緒にしたので、寂しいと思うこともありませんでした」

※【日本社会にはびこる「コロナ差別」の原因は政府の感染症対策だ! ハンセン病専門家が怒りの声】へ続く

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年2月8日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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