療養中じゃなくても人に会いにくい今。Zoomで一緒に食事したり、SNSで情報交換したりするのも有効だ(撮影/写真部・掛祥葉子)
療養中じゃなくても人に会いにくい今。Zoomで一緒に食事したり、SNSで情報交換したりするのも有効だ(撮影/写真部・掛祥葉子)
AERA 2021年2月8日号より
AERA 2021年2月8日号より

 今や、誰がいつ強いられてもおかしくない自宅・ホテル療養。孤独が大きな負担だ。どう対処すればいいのか。AERA 2021年2月8日号で掲載された記事を紹介する。

【図を見る】ひとりでつらくなったときは…

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 自宅療養を始めて数日すると、孤独と不安が押し寄せてきた。

「家族や職場の人たちからの温かいメッセージは支えになりましたが、家には誰もいなくて一人でいる時間が圧倒的に長いので孤独に感じました」

 愛知県の会社員男性(31)は振り返る。昨年12月上旬、発熱がありPCR検査を受けると新型コロナウイルス陽性と判明した。一人暮らしで家庭内感染の恐れがなく熱も下がっていたことから自宅療養を選んだ。

 10日間、一歩も自宅から出られなかった。食事も生活面でも困らなかったが、つらかったのは精神面だ。

「後遺症が残ったらどうしよう、本当に仕事復帰できるのかって、精神的な不安が大きかったです」

■「うつしたかも」と悩み

 コロナの感染拡大で自宅やホテル療養が増える中、「軽症」や「無症状」であっても、孤独や孤立を抱える人は多い。

 1月15日、コロナに感染して自宅療養をしていた都内在住の30代の女性が自殺していたことが分かった。女性は、1月初めに感染が分かった夫の濃厚接触者となりPCR検査を受け、子どもとともに感染が確認された。女性と子どもは「無症状」だったため保健所の指示で自宅療養していたといい、女性は子どもが感染したことについて「自分が娘にうつしたかもしれない」などと悩んでいた。自宅には、「私のせいで周りにうつしてしまった」と家族に謝罪する趣旨のメモが残されていたという。

 感染症による死ではなく、精神的に追い込まれた末の死だった。なぜこのようなことが起きたのか。

 自殺対策に取り組むNPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」カウンセリングセンター長の新行内(しんぎょううち)勝善さん(51)は、緊急事態宣言下の日本社会は、一歩踏み外すと自殺願望が生じやすい社会状況になっていると指摘する。

「自殺は様々な要因が複雑に絡み合って起きますが、対人関係の面でいえば、自分が周囲の人々や社会にとってお荷物であるという感覚と、家族や仲間などの他者から疎外されているという感覚、この二つが持続的かつ同時に起きている時に自殺願望が生じるといわれます。具体的には、『自分のせいで』『私が悪い』といった言葉や強く思い詰めている表情が出た時などです」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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