笠井:信頼できる主治医に出会えたのは大きいですね。妻にがんを伝えたとき、即座に「セカンドオピニオンをとってください」と言われたんです。あの即断はすごい。そのおかげで出会えた先生です。結局、主治医と看護師さんの言っていることを信じるのが一番よかった。私のがんは予後の悪いタイプで、「特別な治療法にします」と言われ、どれだけお金がかかるんだろうと思いましたが、健康保険内の標準治療でした。「もっといい治療があるのでは」と、標準治療をやめて高額な自由診療や民間療法を始めてしまったり、「ネットの沼」にはまるのは危険かもしれません。「医療情報を求めすぎない」ことが、心の安定を保つ「病人のコツ」じゃないかな。

茅原:周囲の方から届く情報もいろいろありました。私が大切に思ったのは、情報の「内容」よりも「気持ち」。気にかけてくださったことが本当にありがたかったです。それをパワーに変えて夫に送らなきゃ!と思っていたので、笠井には「あの人がたくさん情報を教えてくれたよ、よかったね!」と伝えていました。でも、たとえば「この水ががんに効く」と大量に送ってくれた人がいたとしても、私が「必要ない」と思えば夫には見せるだけにしました。

笠井:私宛てにもたくさん届きました。思いはありがたく受け取りました! でも、うのみにはしなかった。サプリメントを飲んでみたりはしましたけど。

茅原:飲んでたのね!(笑)

笠井:うん、善意をいただいているつもりでね。特殊なものには手を出さなかったけど。

 それから、がんの経験者の話は聞きました。やはり仲間意識があるんですよ。ただし、聞くのは病とどう向き合っていたかというマインドの話。治療のことは真に受けちゃいけないと、先輩からアドバイスされました。全くその通りで、10年前、20年前で治療法は全く違う。抗がん剤もかつては吐き気が止まらなくてどんどんやせていくと言われてましたが、今は「吐き気止め」が開発されていて、私は入院中、一度も吐きませんでした。

──笠井さんは入院中もSNSやブログを通じて自分の病状を発信。コメント欄には多くの応援が届いた。

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