協力隊の任期は最長3年間で、任期終了後も約6割が同じ地域に定住し、その3人に1人が起業している。一定の成果が認められ、政府は24年度までに協力隊を8千人にまで増やす方針(20年7月17日閣議決定)だ。

 協力隊にかかる経費は国からの地方交付税で賄われ、20年度は協力隊1人当たり上限440万円。その内訳は、隊員の給与に当たる報償費が240万円、その他の経費が200万円だ。その他の経費には、活動旅費や、作業道具代等の消耗品費、また、協力隊の居住費や車両費も含まれる。

 報償費の上限は21年には270万円、23年以降には上限280万円にまで引き上げられる。20年から正社員と非正規社員の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」が民間企業で導入され、公務員の世界でも正規職員と非正規職員の待遇差を是正する「会計年度任用職員制度」がスタート。民間企業のボーナスにあたる期末・勤勉手当や、退職金が加算されるようになったためだ。

 もっとも、報償費はあくまで上限で、自治体により異なる。20年7月に土佐清水市の協力隊として着任した染谷さんの月給は14万3612円。それでも、車両が無償で貸し出され、3LDK・約80平米の戸建て住宅の家賃も経費から支払われる。任務終了後に協力隊が起業を目指す場合は、受け入れ先を問わず別途100万円の補助も出る。

 染谷さんは「米に野菜に魚と、近所からのお裾分けも多く、貯金を切り崩さずに生活できている」と話す。

「土佐清水市では現在も農業、林業の担い手や、ブランド鶏のPRや販路開拓に関する活動など、様々な募集を行っています。地方移住を考える際、協力隊がその背中を押す制度となっていることは確かです」

■10人の募集に50人超応募 演劇祭の担い手として活躍

 コロナ下で低密な地方に関心が高まるなか、その「移住手段」として協力隊に注目が集まっている。

 北は日本海、東は京都府に接する人口約8万人の兵庫県豊岡市。20年末時点で48人の隊員を採用し、任務終了後の定住率は100%だという。

 20年度は夏と冬に協力隊を募集した。夏は17人の募集に56人、冬は10人の募集に52人の応募があった。豊岡市環境経済課の大岸由佳さんは、

「応募の多さに驚きました。19年末に募集した際は、応募者数は定員の1.5倍で、コロナの影響があったと思います。都市部で様々な経験をした人に街を活性化させて欲しい」

 加藤奈紬(なつみ)さん(25)は「豊岡演劇祭」の企画・運営業務の協力隊に採用され、20年8月に豊岡市に移住した。

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