ベースは2013年、時のオバマ米大統領が「国家戦略」としたScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)Mathematics(数学)の頭文字からなるSTEM教育だ。その後、複雑化、不安定化する社会の中で課題を解決していくには、テクノロジーを使いこなすだけでなく、創造性や教養も必要だという視点からArt(芸術やリベラルアーツ)が加わり、STEAMとなった。スポーツのSをつけSTEAMSと称されることもある。その広がりは、米国から中国、シンガポール、欧州に及び、日本でも急速に浸透している。

■「知る」と「創る」の循環

 明治以来、日本の教育は、「教科を軸に、先生が一斉に教える」形式が主流だった。STEAMはその変革を迫るものだ。

 中島さんが研究員として参加する経済産業省の「未来の教室」はSTEAMの特徴として(1)一人ひとり違う「ワクワク」が核
(2)「知る」と「創る」を循環させる
(3)文理融合の横断的な学び
の三つを挙げる。子どもは受動的に「教えてもらう」のではなく、能動的に「自ら学ぶ」存在だという認識だ。

「プロのスポーツ選手もアーティストも研究者も究極的には、すごく“好き”で“面白い”と思うからやっているのです。単に得意だからとか良い点を取りたいという動機ではいずれ行き詰まってしまう。本来、学びとはもっと主体的で生き生きしたもの。だから『ワクワク』がとても大事なんです」(中島さん)

 タグラグビー×算数では、試合→分析→試合→分析の流れが(2)の「知る」と「創る」の循環になる。「創る」は失敗を恐れず、まず手や体を実際に動かすことだ。

「日本では、応用は基礎を固めてからとか、エンジニアリングはプログラミングや設計の基礎を学んだ人だけがやるもの、と思われがちですが、海外の捉え方はもっと自由。エンジニアリングはアートに近いんです。そこでは身体性が重要で、五感を使って創ってみて、そこで何かの知識が必要になったら学ぶ。どんどん失敗しながら前進する学びこそが、変化の激しい時代に求められているのです」(同)

(編集部・石臥薫子)

AERA 2021年2月1日号より抜粋