男子平泳ぎは国内に世界トップレベルの選手がそろい、五輪代表争いも熾烈だ。前出の渡辺のほか、17年世界選手権銀メダルの小関也朱篤(28、ミキハウス)や19年世界選手権代表の小日向一輝(26、セントラルスポーツ)らも有力候補。佐藤は言う。

「僕は国際大会の経験もまだ少ないし、いま海外の試合がほとんどない中で、国内に強い選手がいて、気を抜かずに世界を意識することができてうれしい」

 国際試合の経験が積めない状況にもかかわらず、世界レベルのレースを体感できていることが追い風になっている。

 佐藤の強みは、足首の可動域の大きさを生かした強いキック。「足をしっかり後ろに向けることができるので、ほかの選手より、水を捉えられる自信がある」と話し、このキックを生かして、前半からスピードに乗っていく。

「もちろん僕以外に成長している選手はいると思うけど、1年で2秒もタイムが伸びる選手はほかにいないと思います。自分が今までにないスピードで泳げたときはすごく気持ちいい。もっともっと進化して、康介さんのように誰にも超えられない存在になりたい」

(文中敬称略)(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年2月1日号より抜粋