さらに、議事堂襲撃事件を計画した極右グループを支援した議員がいる可能性も指摘されている。ボルトン氏はこう話す。

「共和党にとって、トランプが国家と党に与えたダメージを修復していくことが重要だ。1月6日に事件があり、トランプがたきつけたから事件が起き、共和党はトランプと同じ考え方だと思われることに対して懸念がある。しかし、トランプの影響力はすでに下降しており、さらに下降していくだろう」

 ボルトン氏は、20年大統領選挙前に「トランプ氏がどんな人物なのか、人びとに正確に伝えたかった」と『ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日』(朝日新聞出版)を著した。ボルトン氏が、トランプ氏の大統領補佐官となった直後に起きたのが、トランプ氏が強引に進めた北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長(現在は総書記)との初会談だった。通常であれば、共同宣言などの周到な準備を、事前に時間をかけた上で開かれる首脳会談だが、そうしたプロトコルを一切無視したトランプ氏。ボルトン氏が「外交は、強力な統率力、長期的な視点、持続性、実行力が必要なのに、トランプ氏は毎日何か新しいことをでっち上げる」ことを思い知った出来事だった。

■北朝鮮と伝統的な交渉

 そのボルトン氏に北朝鮮と日本の関係が、多国間協調を重視すると見られているバイデン新政権の下で、どのように変わるのか聞いてみた。

 ボルトン氏は、バイデン新大統領が「オバマ前大統領の政権時代と同じような伝統的な交渉を続ける」としたものの、北朝鮮が核兵器開発計画を止めることは「疑わしい」ため、具体的な取り決めが実現することは困難とした。また、菅義偉首相には、バイデン氏に対し、「核兵器開発と拉致問題がいかに日本にとって重要な問題かを伝える重要な役割がある」と指摘した。(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))

AERA 2021年1月25日号より抜粋