「感染が怖いからって、受験校数を減らすことは考えていません。チャンスを狭める必要はないかと。1月入試も含めて受験するつもりです」

 と話すのは、鴎友など都内の難関女子校を目指す子を持つ40代の母親だ。事実、先日行われた埼玉入試を見ても、受験者数に大幅な変化は見られなかった。

 教室に入る人数を減らすため、第1回入試を2日に分けて行った栄東中学の入試には6044人が出願、過去最高の受験者数を記録した昨年の数字と比べるとやや少ないようにも見えるが、出願者に対し実際に受験した人数から割り出す受験率は96.4%と高い数字に留まった。同校では今年コロナ対策として予約制で400台分の駐車場も用意したが、申し込み開始30分で埋まってしまったという。

■追試の有無は学校次第

 同校の担当教員は言う。

「昨年が多かったので減ったように見えますが、例年志願者数は6千人前後です。蓋を開けてみたら、コロナ禍による受験控えはあまり見られませんでした。うちの場合、体調不良の時は追試を受けられるようにしたため、当日、『微熱があるので』と追試に変更する家庭もありました。途中で体調が悪くなり、周りの集中力を切らしたら申し訳ないからと言われていました。他の受験生を気遣う保護者が多いように思います」

 だが、体調不良者に向けての追試の有無は学校により対応が分かれる。難関校を目指す女の子を持つ母親は「追試をしてくれる学校としない学校があるのは疑問です」と不満そうだ。

「志望校にした4校は全部追試がありません。コロナ禍を考慮してくれる学校と、しない学校があるのはなぜなのか、不思議で仕方がありません」

 私立の場合、それぞれの学校に判断が委ねられている。ばらつきが出るのは仕方がない。前出の栄東中学の教員は言う。

「これだけの感染状況ですから、罹患は仕方がないとしても、入試に来て罹患したというのは避けなければと思いました。追試を設けたことで、無理をしてまで来るという家庭が減り、他の受験生も学校も、お互いに安心だったと思います」

(フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2021年1月25日号より抜粋