■コロナに強い全体主義

大野:さてコロナ禍に関して、あなたは中国に批判的です。ウイルスの発生源だからですか。
トッド:コロナ禍によって、中国の脅威、とりわけ民主主義と自由への脅威がはっきりしたからです。

 コロナ禍で、日本やドイツは比較的うまく対応しました。社会秩序がしっかりしていますから。中国は、その日独よりもっと秩序だっていました。全体主義体制だからです。その結果、危機に対して備えができているのは、全体主義システムの方だということになりました。

 私たちは挑戦を受けているのです。歴史はひょっとしたら、全体主義国が持っている武器を民主主義国が持ち合わせていないという時代に入りつつあるのかもしれないからです。

 ちょっと1930年代に似ています。ヒトラーのドイツや軍国主義の日本、スターリンのソ連など全体主義的国家の方が、態勢が整っていました。うっとうしい話です。今はその違いが当時ほど劇的な意味は持たないでしょう。でも、全体主義国家の方が危機には強そうです。

 また、医薬品をはじめ物資の供給という点でも、中国への依存度の大きさに気づかされました。そして自由への脅威。中国は新しいテクノロジーで監視社会の体制をつくりつつあります。受け入れがたい。

 中国を制御する態勢が必要です。コロナ禍は、その意識の高まりを世界で加速することになるでしょう。

 ここでいっておきたいのですが、これこそトランプ氏の歴史的な勝利です。中国は問題だと言い出したのは彼なのです。

大野:中国の脅威を押し返すには何が必要ですか。

トッド:米国には、ロシアと敵対するのをやめて中国から引き離す戦略に転じてほしい。

 ロシアは、日本と同じように中国に脅威を感じています。そのことを理解しなければいけません。もし、優れた米国の大統領がロシアと友好的な関係を結べば、中国から最先端の軍事技術を遠ざけることができます。

 ただ私は中国が世界を支配する国になるとまでは思っていません。中国の優位は一時的でしょう。
 

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