岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年、東京生まれ。地球上のあらゆるフィールドで活躍する動物写真家。一方で、ライフワークとして猫を半世紀以上撮り続けている。2012年からNHK BSプレミアムの番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」の撮影を手がける(撮影/写真部・加藤夏子)
岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年、東京生まれ。地球上のあらゆるフィールドで活躍する動物写真家。一方で、ライフワークとして猫を半世紀以上撮り続けている。2012年からNHK BSプレミアムの番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」の撮影を手がける(撮影/写真部・加藤夏子)
「猫って、こんなに一匹一匹違う表情を見せてくれるんだ、と感じてもらえたらうれしいですね」と岩合監督。「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族」は、現在全国公開中 (c)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会 〓Mitsuaki Iwago
「猫って、こんなに一匹一匹違う表情を見せてくれるんだ、と感じてもらえたらうれしいですね」と岩合監督。「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族」は、現在全国公開中 (c)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会 〓Mitsuaki Iwago

 世界中を「ネコ目線」で撮り続けてきた動物写真家・岩合光昭さんによる人気のドキュメンタリー番組の劇場版「世界ネコ歩き」第2弾が1月8日に公開されました。AERA 2021年1月18日号では、岩合さんが映画制作のエピソードを語ります。

【「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族」の場面写真はこちら】

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 暗闇に浮かび上がる1匹の猫。その姿を覆うように漂う美しい白い靄は、カメラが引くと、牛の鼻息が生む湯気であることに気づく。そこで舞台は一転、きらめく川面へ。小さな船の舳先に座る4匹の猫たちと、水をかく櫂が映し出される。

 そんな視覚に訴えかける映像から、映画「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族」は幕を開ける。監督・撮影は岩合光昭。日本屈指の動物写真家で、“ネコ写真家”としても知られる。

 NHK BSプレミアムの人気番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」から生まれた劇場版第2作にあたる本作は、二つの舞台を行き来するように紡がれる。タイトルにもあるとおり、ミャンマー・インレー湖の「水」とともに暮らす猫の一家と、北海道の「大地」に生きる複数の猫の家族が織りなす社会のあたたかさ、厳しさを、「ネコ目線」で追う作品だ。岩合監督に話を聞いた。

■猫の家族と愛がテーマ

──ひとつの猫の家族を核に、世界各国の猫たちをオムニバスのように構成した2017年公開の第1作「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち」とは、かなり趣が異なるように感じました。

岩合光昭(以下、岩合):前作は、テレビ版をそのまま劇場版にしようということで、テレビ用に撮影した素材を番組ディレクターが再編集して、テレビと変わらない作りにしました。そのため映画関係者から「テレビ番組が映画館にかかったみたいだね」という厳しいご意見をちょうだいしてしまって。今回は、最初から映画を作ろうという意志のもとに撮影しました。

──北海道の牧場とミャンマーの湖とを舞台とする構想は、当初からあったのでしょうか。

岩合:ミャンマーには以前テレビ版のロケで訪れていて、猫の一家と人の一家がひとつの高床式の家で寄り添うように暮らしている姿が強く心に残っていました。今回、家族や愛をテーマに猫の映画を作ろうと考えたとき、あの一家が最もふさわしいなと思ったんです。

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