都内に住む10代の学生、宮崎拓海さん(ハンドルネーム)は、妄想鉄とは「限りない空想の奥底にたどり着くまで追求していく一つの趣味」という。小学校低学年から妄想鉄だったという筋金入りだ。

 昨年7月に完成したのが、「首都圏地下鉄」だ。その名の通り、首都圏を走る架空の地下鉄。練馬と半蔵門間を走る「目白線」、東京都の王子と神奈川県の三崎とを結ぶ「品川線」など全5路線ある。モットーは、

「現実路線を尊重してあくまで設定変更していない」

 言葉通り、どの路線も東京メトロの路線図に似せている。

「妄想鉄の中には、現実路線の設定を変更し既存の線路はなかったことにしている人もいます。しかし現実の路線の中に妄想の路線が混じってる方が現実味も増すと思います」(宮崎さん)

 これからは大手私鉄のように、神奈川県や千葉県などさらに首都圏全体に路線を広げるべく検討中という。妄想鉄は奥が深い、と宮崎さん。

「妄想鉄は深めることが大事ですから、深めなければ意味がありません。妄想鉄とは何かについて、今後も突き詰めていくと思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年1月11日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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