この作品が、少女漫画におけるメディアミックスの先駆けとして、テレビアニメにとどまらず、関連グッズからテレビドラマ、映画、ミュージカルと他ジャンルにまで広がったのも、作品の普遍性によるのだろう。

 さらに言語を超えて世界にも広がっている。原作は全世界で3千万部を超え、テレビアニメは14言語、40カ国で放映されてきた。“クールジャパン”として、世界に広がった先駆的作品だ。ちなみに、今、一番熱いのはアメリカ。海外でも大人のファンは多いという。

「『美少女戦士セーラームーン』が始まった頃は、男女雇用機会均等法が制定され、女性が『自分たちが主役だ』と、社会で大活躍を始めた時代。意識して取り入れたかどうかはわからないが、武内さんがその時代感覚をうまく切り取って取り込んでいることも、時代や国を超えて広がった理由の一つではないでしょうか」(小佐野さん)

 新作映画で、自分の弱さが恋人の足手まといになるのでは……と悩むのは男性だ。セーラー戦士たちも自分のありかたについて、自問自答する。観客はその姿を見て、社会で悩みながら生きる自分たちに重ねる。

 確かに“今”が反映されている。それも魅力だ。

(ライター・矢内裕子)

AERA 2021年1月11日号より抜粋