——撮影は、富山市の岩瀬浜や、実際に米蔵として使用されていた魚津市の旧十二銀行など、富山県内を中心に行われた。

本木:富山の人たちは、根はお祭り好きなんです。でも、アピールがあんまりうまくないから、全国的には目立たない存在でしょう? 自分としてはそこをちょっと変えたい(笑)。以前、「釣りバカ日誌」を撮ったときもそうでしたが、今回も皆さんすごく熱心に撮影に協力してくださいました。

井上:私は、今でも当時の場所が残っていることが、興味深かったですね。100年以上前の生活を演じるとなると、文字や映像の資料だけではどうしてもわからない部分も出てくるんです。撮影では、実際に使われていた蔵で演じることができたので、すごくイメージが膨らみました。そこも観ていただきたいポイントのひとつですね。

——作中では、女性たちが連帯して米商人と戦う様子が、コメディーを交えつつ、パワフルに描かれている。女性たちを団結させたのは、愛や友情といったきれいごとではなく、「自分がやらなければ家族が死ぬ」という危機感と責任感だ。

本木:日本は形式的には男女同権にはなったけれど、いまだに格差は消えていませんよね。女性の政治家だって圧倒的に少ない。先の見えない不安定な時代だからこそ、生活に根差した考えができる女性がリーダーになったほうがいいと僕は思うんです。映画を通じて、そうしたことを話し合うきっかけになればと思います。

井上:100年前の出来事なのにとても共感できました。多くの人に共感していただけるとしたら、それは本質的なところで、現代と変わらない部分があるからなんだと思います。

(構成/ライター・澤田憲)

AERA 2021年1月11日号