本木:撮影前に、井上さんからお電話でいろんな意見をいただいたんですよ。映画に登場する富山の女性たちは、船に米を積み込む「仲仕」という仕事をしているのですが、「米俵を担ぐシーンはもっと細かく描いたほうがリアリティーが出るんじゃないか」とか。そのおかげで、働いているシーンに躍動感が生まれました。

井上:昔の社会では、「男が働いて女が家を守る」という役割分担は、当たり前になっていたんだと思うんです。でも、富山の漁村の女性たちは、夫が長期間の漁に出てしまうので、毎日子育てをしながら大変な仕事をしていました。そこに心を打たれました。

■本質は変わらない

——仕事と家庭の両立については、現代でも多くの女性が悩みを抱えている。一方で、時代ならではの切実な背景もある。

井上:「働く女性」というとポジティブな印象ですが、当時は「働かざるを得なかった」というほうが正確かもしれません。夢や自己実現のためではなくて、目の前にいる子どもの空腹を満たすために、必死で働いていたんですよね。

本木:私の祖母もそうでしたが、当時はどれだけ勉強ができても「女に学問はいらない」と言われて、進学をあきらめざるを得なかった時代でした。一方で、井上さんが演じた「いと」のように、表舞台には出てこなくても聡明な女性がいたということは、この作品で描きたかったことの一つです。

——女性の登場人物が圧倒的に多いことも、本作の特徴だ。

井上:現場は女子校みたいな雰囲気でしたね。幅広い世代の女優さんが集まっていたんですけど、上下関係なく皆でワイワイおしゃべりしていました。日焼けメイクの落とし方とかで盛り上がったり(笑)。

本木:集まると、すごいエネルギーを感じたよ。アクションシーンも、皆さんノリノリでやってくれた。

井上:米の積み出しを阻止するために、数十人で「わー!」って叫びながら砂浜を走るシーンがあるんですけど、爽快感があって、演じていてとても楽しかったんです。ただ、いとたちは本当に必死なので、「楽しく見え過ぎないように気をつけないとね」と、本木監督とは話していました(笑)。

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